社会福祉法人における決算期のスケジュール

社会福祉法人における決算期のスケジュール

2026.04.25

社会福祉法人における決算期のスケジュール
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理事長・施設長・事務長様
株式会社幼保支援 法人運営支援/施設DX推進担当の大田黒です。
毎年春になるとやってくる社会福祉法人の決算業務。日常業務に追われる中での計算書類の作成、監事監査の日程調整、理事会・評議員会の開催、そしてWAM NETでの現況報告書の提出と、息をつく暇もないスケジュールですよね。手続きの順番を一つ間違えるだけで、やり直しになったり行政監査で指摘を受けたりと、気苦労が絶えない時期かと思います。今回は、事務担当者の皆様がスムーズに決算期を乗り切るための、正確なスケジュール管理と実務上のポイントについて、現場目線で詳しく解説していきます。


1. 社会福祉法人の決算業務における基礎知識

社会福祉法人の決算は、単に1年間の収支をまとめるだけではありません。社会福祉法という法律に基づき、決められた期間内に計算書類を作成し、第三者である監事の監査を受け、さらに理事会と評議員会の両方で承認を得るという、厳格な手続きが求められます。この手続きの順序や期限には法的な根拠があり、スケジュール通りに進めないと監査指摘となるリスクがあります。

特に事務長や事務担当者を悩ませるのが、複数の関係者のスケジュール調整と、書類作成のタイミングです。現場でよく起こる具体的な悩みとしては、以下のようなものが挙げられます。

  • 税理士や会計士から決算書があがってくるのが遅く、監事監査の日に間に合わない。
  • 監事、理事、評議員の日程が合わず、法定の開催期限ギリギリになってしまう。
  • 理事会の承認や議員会の承認を忘れてしまう(議事録に書き忘れる)。
  • 現況報告書の入力内容について、何となくで記載しておりあっているか不安になる。

これらの事態を防ぐためには、最終的な提出期限である「6月末」から逆算して、4月の初めには全体の日程を確定させておくことがポイントなんです。特に役員の皆様はお忙しい方が多いため、数ヶ月前からの根回しと日程の確保が、スムーズな決算業務の鍵を握ります。


2. 決算から現況報告書提出までの手続きフロー

それでは、3月31日の決算期末を迎えてから、6月末に所轄庁へ届出を行うまでの一連の流れを、5つのステップで詳しく見ていきましょう。

  1. 計算書類・財産目録等の作成(4月〜5月中旬)

    年度末の締め作業が終わり次第、速やかに計算書類(資金収支計算書、事業活動計算書、貸借対照表)および附属明細書、財産目録、事業報告書を作成します。会計事務所に委託している場合でも、施設側での領収書の整理や未払金・前払金の確定作業を早めに終わらせる必要があります。遅くとも5月の中旬までには、全ての書類の原案を完成させておくのが実務上の目安です。

  2. 監事監査の実施と監査報告書の受領(5月中旬〜下旬)

    作成した計算書類等と事業報告書を監事に提出し、監査を受けます。監事は書類の内容と法人の業務執行状況を確認し、「監査報告書」を作成します。ここで注意が必要なのは、この監査報告書を受け取るまでは、次のステップである理事会を開催することができないという点です。必ず「監査報告書の日付」が「理事会の開催日より前(または同日)」になるようにスケジュールを組んでください。

  3. 理事会の開催と定時評議員会の招集決定(5月下旬)

    監事監査を終えた計算書類等について、理事会で承認を受けます。また、この理事会では、決算承認を行う「定時評議員会」の招集についても決議します。定時評議員会の開催日時、場所、目的事項を決定し、理事長が招集手続きを行います。また、計算書類に関する評議員会の開催日は、理事会で書類が承認された日から中2週間開ける必要がありますので、日程の間隔に余裕を持たせることが重要です。

  4. 定時評議員会の開催(6月中旬〜下旬)

    社会福祉法人の決算手続きにおいて、最終的な承認機関となるのが定時評議員会です。理事会で承認された計算書類等を提出し、承認を受けます。定足数(評議員の過半数など、定款で定めた人数)を満たしているかを当日に必ず確認してください。ここで承認されて初めて、法人の決算が確定することになります。

  5. 現況報告書の提出・財務諸表等電子開示システム(WAM NET)への入力および登記(6月末まで)

    決算が確定したら、所轄庁(都道府県や市区町村)に対する現況報告書の提出と、独立行政法人福祉医療機構が運営する「財務諸表等電子開示システム(WAM NET)」を通じた情報公開を行います。期限は毎会計年度終了後3ヶ月以内(通常は6月30日まで)と法律で定められています。システムへの入力項目は非常に多く、エラー対応に時間がかかることもあるため、評議員会が終わったら数日以内に入力を開始することをお勧めします。また、同時に「資産の総額登記」を法務局で行います。


3. 実務で陥りがちな注意点とNG行動

スケジュールを立てていても、思わぬ落とし穴があるのが決算業務の怖いところです。ここでは、行政の指導監査などで指摘されやすいポイントや、実務担当者がやってしまいがちなNG行動をまとめました。これらは手続きの無効化に繋がるリスクがあるため、十分に注意してください。

⚠ 監査日と理事会・評議員会の日付の矛盾

書類作成の遅れから、監事の監査が終わっていないのに理事会を開催してしまうケースがあります。法律上、計算書類は「監事の監査を受けた後」でなければ理事会で承認できません。監査報告書の日付が理事会の日付より後になっていると、監査で確実に指摘され、手続きのやり直しを求められる可能性があります。

  • 招集通知の発送期間の不足: 定款で「開催日の1週間前までに発する」と定められている場合、発送日と開催日は期間に含めず、中7日を空けるのが原則です。特にこの期間はタイトなスケジュールとなりがちなため、この期間が不足していると、会議そのものの効力が問われます。
  • 定時評議員会の開催日: 上記の通り招集通知の提出は中7日ですが、計算書類の理事会決議から中14日開けるのが原則です。慣れてないうちには忘れがちのため、注意が必要です。
  • 決算承認前に所轄庁へ提出してしまう: 定時評議員会で計算書類が承認される前に、WAM NETへの入力や所轄庁への提出を完了させてしまうのはNGです。必ず「確定した決算」を報告する必要があります。

4. 決算期の実務Q&A

現場の事務長や担当者の方からよくご相談いただく、決算スケジュールに関連する疑問にお答えします。

  • 理事会で計算書類に修正事項が見つかった場合、どうすればいいですか?

    理事会で修正の指示が出た場合、その内容が軽微な誤字脱字等であれば議長の権限で修正し、そのまま評議員会に提出することが可能です。しかし、金額の訂正など内容に重大な変更を伴う場合は、再度計算書類を作成し直し、改めて監事監査を受けた上で、別の日に理事会を開催して承認を得る必要があります。このため、事前の入念なチェックが不可欠です。

  • 定時評議員会に監事が急病で出席できなくなりました。会議は開催できますか?

    監事の出席は原則として求められますが、欠席したからといって定時評議員会が無効になるわけではありません。ただし、監事は評議員会において監査結果の報告義務等があるため、やむを得ず欠席する場合は、あらかじめ監査報告書を書面で詳細に提出し、議長や他の理事がそれを代読するなどの対応をとるのが実務上適切です。

  • WAM NETの現況報告書の入力で、期限の6月30日にどうしても間に合いそうにありません。

    提出期限である「会計年度終了後3ヶ月以内」は法律で定められているため、遅延は厳格に指導の対象となります。もしもやむを得ない事情で遅延が予測される場合は、判明した時点で速やかに所轄庁へ連絡し、事情を説明して指示を仰いでください。無断で期限を過ぎることは法人のガバナンスを疑われる要因となります。


5. この記事のまとめ

今回は、社会福祉法人の決算期における手続きのフローと、実務上の注意点について解説しました。4月の決算整理から始まり、監事監査、理事会、評議員会、そして現況報告書の提出と、各ステップが密接に連動していることがお分かりいただけたかと思います。

これらの手続きは、法律の要件を満たすために順序や期限を守ることが何より重要です。「忙しいから」「日程が合わないから」と順番を前後させてしまうと、後から監査で指摘され、膨大なやり直し作業が発生してしまいます。だからこそ、年度末の早い段階で役員・評議員の日程を確保し、余裕を持ったスケジュールを組むことが、事務担当者の負担を減らす一番の近道です。

毎年のこととはいえ、法改正やシステムの変更などで気をつかう部分も多い決算業務。今年のスケジュール計画は、もう進められていますでしょうか? 手続きの全体像を把握し、一つひとつのステップを確実に行っていきましょう。