社会福祉法の【吸収合併】手続きの手順とは

社会福祉法の【吸収合併】手続きの手順とは

2025.12.23

株式会社幼保支援 法人運営支援/施設DX推進担当の大田黒です。

「事業の譲渡・法人合併」理事長や事務長の皆様、そんなお悩みをお持ちではありませんか?

2040年に向けた生産年齢人口の減少や福祉ニーズの多様化に伴い、社会福祉法人でも「合併」や「事業譲渡」による経営基盤の強化(事業展開)が有効な選択肢となっています 。

しかし、いざ進めようとすると、「評議員会はいつ開く?」「債権者への通知は?」「登記のタイミングは?」と、やるべきことの多さに圧倒されてしまいますよね。特に社会福祉法人の合併は、公益性・非営利性の観点から非常に厳格な規制があり一筋縄ではいきません。

今回は、最も一般的な手法である「吸収合併」に焦点を当て、その手続きの流れと「絶対にやってはいけない落とし穴」を、専門用語を噛み砕いて解説します。

ココ+ナビ

事業所の譲渡・廃止が増えてきていますが、保育事業所は1法人1施設での運営が多い為、事業譲渡=吸収合併 事業廃止=法人解散の手続きが併せて必要になります。


そもそも「吸収合併」?
吸収合併とは、一つの法人が他の法人を飲み込む形で統合することです。 「吸収合併存続社会福祉法人(残る法人)」が、「吸収合併消滅社会福祉法人(なくなる法人)」の一切の権利義務(資産、負債、契約関係など)を承継します 。

消滅する法人は清算手続きを経る必要がないため、事業の継続性を保ちやすいのが特徴です 。

社会福祉法第 50 条(吸収合併の効力の発生等)

2 吸収合併存続社会福祉法人は、吸収合併の登記の日に、吸収合併消滅社会福祉法人の一切の権利義務(当該吸収合併消滅社会福祉法人がその行う事業に関し行政庁の認可その他の処分に基づいて有する権利義務を含む)を承継する。

合併手続きの4ステップ
合併の手続きは大きく「法人間調整」「法令手続き」「関係者調整」「事後対応」の4つに分類されます 。 ここでは、特に分かりずらい「法令手続き」を中心に流れを見ていきます。

STEP 1:合意形成と契約締結
まずは法人間で「秘密保持契約」や「基本合意書」を結び、協議を重ねます 。
合意に至ったら、それぞれの理事会で承認を得た上で、「合併契約」を締結します。
合意契約書を締結する際には理事会で契約行為についての決議を行う必要が有ります。
STEP 2:【重要】事前開示と評議員会の承認
合併契約について決議を行う評議員会の日から2週間前までに、合併契約の内容等を記載した書面を主たる事務所に備え置く必要があります。

消滅法人:評議員会承認から合併登記の日まで備え置き。

存続法人:評議員会承認から合併登記後6ヶ月を経過する日まで備え置き 。

この「2週間前」という期間計算を間違えると、決議自体に瑕疵(かし)が生じるリスクがあるので要注意です。その後、双方の評議員会で、合併契約の承認決議を行います 。
STEP 3:所轄庁の認可と債権者保護
評議員会の承認を得たら、所轄庁(都道府県や指定都市など)へ合併認可申請を行います 。 認可が下りたら終わりではありません。次は「債権者保護手続き」です。

官報公告:合併する旨や計算書類の内容を官報に掲載します 。
個別催告:銀行などの知れている債権者には個別に通知します 。

債権者が異議を述べられる期間として、最低2ヶ月以上を確保しなければなりません 。この期間は短縮できないため、スケジュールへの影響大です。
STEP 4:登記と事後開示
すべての手続きが完了したら、主たる事務所の所在地で2週間以内に登記申請を行います 。 合併は、この「登記」によって効力が発生します 。 登記後は遅滞なく、承継した権利義務などを記載した書面を作成し、6ヶ月間備え置く「事後開示」を行います 。

事務長がハマりやすい「3つの落とし穴」
実務支援の現場でよく見かける「ヒヤリハット」事例をご紹介します。

スケジュールの逆算ミス

「年度末(3月31日)に合併したい!」という場合、逆算はできていますか? 所轄庁の認可審査期間に加え、「債権者保護手続きの2ヶ月間」は絶対に短縮できません 。さらに事前開示の2週間などを加味すると、半年前には具体的な契約締結まで進んでいないと間に合わないケースが多いです。

職員・利用者への説明不足

吸収合併は「雇用契約・労働条件は承継される」のが原則ですが 、給与体系や就業規則が変わる場合、不利益変更にならないよう十分な配慮と同意が必要です。 また、利用者さんとの契約も重要です。基本的には承継されますが、サービス内容や料金が変わる場合は、同意の上で契約の再締結(重要事項説明書の取り交わし直し等)が必要になります 。ここを疎かにすると、信頼を失いかねません。

特別な利益供与・利益相反の抵触

平成28年の法改正で、役員等への「特別の利益供与の禁止」が厳格化されました 。 例えば、合併に伴う新役員の報酬が不当に高額であったり、退職金が規定に基づかない額であったりすると、法令違反となります。 また、理事長が合併相手の法人の役員を兼ねている場合などは「利益相反取引」に該当する可能性があるため、理事会での承認プロセスなどがより慎重に求められます 。

ココ+ナビ

吸収合併時に退職する職員に対しても、規程基づかない額の退職金を支給すると、不適切な資金利用にあたる可能性が有ります。


いかがでしたでしょうか? ここまで解散手続きの流れを解説してきましたが、読み進める中で「想像以上にやることが多いな…」「今の事務体制でミスなく完遂できるだろうか」と不安を感じられた方もいらっしゃるかもしれません。

通常、私は業務効率化のためのシステム導入をご提案していますが、今回のような「法人の解散」という一生に一度あるかないかの重大な局面においては、ツールだけで解決しようとせず、人の手を借りることも賢明な経営判断だと考えています。

弊社の「法人運営サポート部」では、こうした複雑な解散手続きの伴走支援を行っております。

主な支援内容

  • 所轄庁との事前協議のサポート: 行政との専門的なやり取りをバックアップします。
  • 膨大な書類作成の実務支援: 申請書や議事録など、書類作成をお手伝いします。
  • スケジュールの管理: 官報公告や登記のタイミングを逃さないよう、進行を管理します。

「すべてを丸投げする」というわけではなくとも、「ここぞという時の相談役」として専門家が横にいるだけで、理事長や事務長にかかる心理的なプレッシャーは大きく軽減されるはずです。

長きにわたり地域福祉に貢献された貴法人の最後を、滞りなく、そして美しく締めくくるために。もし、内部のリソースだけで進めることに少しでも不安があれば、選択肢の一つとして私たちを頼ってください。

まずは「今の状況で何から手をつけるべきか」、整理するためだけのご相談でも構いませんので、無料相談をご希望の方は弊社ホームページよりお問い合わせください。

大田黒 健太 法人運営支援・施設DX推進

Kenta Ootaguro

熊本出身
法人運営支援を主として、ICTシステム導入・認可申請支援・WEBサイト企画・認定こども園移行支援等、保育事業の幅広い支援をおこなう。

社会福祉法人支援システム ココ+ナビ プロジェクトリーダー