2026年 社会福祉法人運営の完全ロードマップ

2026年 社会福祉法人運営の完全ロードマップ

2026.01.04

2026年 社会福祉法人運営の完全ロードマップ
ココ+ナビ

理事長・施設長・事務長様
株式会社幼保支援 法人運営支援/施設DX推進担当の大田黒です。
明けましておめでとうございます。三が日も明け、仕事始めという理事長先生、事務長様も多いのではないでしょうか。
さて、新年一発目の記事ですが、今回は「保存版」として気合を入れて執筆しました。テーマは、「2026年 社会福祉法人運営の完全ロードマップ」です。
特に、これから春にかけて皆様を悩ませる「次年度事業計画」と「当初予算」の策定が迫ってきておりますが、ここが運営において一番大切だと考えています。なぜなら、ここが法人運営の肝だからです。ここがズレると、1年間苦しい思いをすることになります。
「法律の条文なんて読みたくない」「毎年なんとなくやっているけど、正解がわからない」
そんな皆様のために、専門用語を極力噛み砕いてお届けします。少し長くなりますが、ぜひ最後までお付き合いください。


1. 新年早々書類作成の波

お正月気分が抜けると、一気に慌ただしくなります。2月~3月末までに「来年度の計画と予算」を確定させなければならないからです。

この「来年度の計画と予算」がその年の運営の質を決めます。

なぜ「2月・3月」が重要なのか?

一般企業であれば「期の途中でも予算修正すればいいや」という感覚があるかもしれません。しかし、社会福祉法人は違います。皆様が扱うのは、公金(措置費や給付費)です。
そのため、「新年度が始まる前に、理事会の場で、使い道と計画を承認してもらわなければならない」というルールがあります。

だからこそ、この1月~3月は、「最も神経を使う時期」なのです。


2. 【2月~3月】次年度事業計画・当初予算策定

では、具体的にこの時期、何をどう進めればいいのか。ステップで解説します。

  1. 現場の声を拾い上げる(1月)

    事務室の机の上だけで計画を作っていませんか? まずは現場主任や施設長とヒアリングを行います。
    人の動き:「来年、産休に入る職員は?」「定年退職者は?」「新規採用は何人?」これが人件費予算に直結します。社会福祉法人の支出の6〜7割は人件費。ここの見積もりが甘く大変な思いをされた方もいらっしゃるのではないでしょうか。
    モノの動き:「送迎車の買い替え」「遊具・空調の修繕、来年こそ必要?」修繕費や備品購入費の洗い出しです。

  2. 事業計画案の作成(1月中旬~2月上旬)

    ヒアリングを元に、来年度の事業計画を作ります。「前年度踏襲」というコピー&ペーストを使いたくなりますが、ぐっと堪えてください。
    重点目標:折角の新年度なので「今年は地域交流を再開する」「ICT導入で残業を減らす」など、具体的な目標も掲げてみてください。
    数字の根拠:なぜその事業を行うのか、定員率はどう見込むのかを明記します。

  3. 当初予算書の作成(2月中)

    ここが事務長様の腕の見せ所です。事業計画をお金(数字)に翻訳する作業です。
    収入の部:処遇改善加算の要件変更や、公定価格の改定情報をキャッチアップし、しっかり見積もります。私も良くご支援するのですが、予測値でも良いので、各月の想定利用者数を元にした精度の高い収入予算を立てて頂くのをおすすめしています。
    支出の部:昇給幅、賞与引当金、退職手当共済などを細かく計算。物価高騰の影響を考慮し、光熱水費や食材費は少し余裕を持たせた方が安全です。

  4. 理事会の開催(3月中)

    作成した案を、手続きに乗せます。通常、開催日の1週間前までに、議題と資料を添えて理事・監事へ招集通知を発送します。
    理事会で事業計画と予算案が承認されて初めて「確定」となります。

【ココ+ナビからの実務アドバイス】
保育施設は、人事院勧告増額分で5.3%が発表されました。また、処遇改善等加算についても令和8年度から一本化の移行措置が無くなりますので、今一度計算を行い、支給の計画を立てる必要があります。
公定価格に基づいた最適な職員配置計画(採用計画)と、前年のコピーではない収入予算の立案を行うことが、この時期の最重要課題です。

この一連の流れを3月末日までに完了させます。逆算すると、3月中旬には会議を開催したい。となると、資料は3月上旬~中旬には完成していなければならない。……意外と時間がないことがお分かりいただけると思います。


3. 怒涛の業務が重なる「決算・定時評議員会」シーズン(4月~6月)

無事に4月を迎え、新年度がスタート!……と息つく暇はありません。経理担当者にとっては、ここからが本当の戦いです。昨年度の「決算書」を作らなければならないからです。

  • 4月~5月:計算書類の作成と監事監査
    貸借対照表、資金収支計算書、事業活動計算書の「財務3表」に加え、注記表などの附属明細書を作成します。事業報告書で計画通りに事業が行われたかをまとめ、監事様にチェックしてもらいます。ここで「監査報告書」をもらわないと、理事会が開けません。
  • 5月~6月:決算理事会と定時評議員会
    株式会社でいう「株主総会」にあたるのが、定時評議員会です。社会福祉法では、「会計年度終了後3ヶ月以内(6月末まで)」に開催することが義務付けられています。
    5月の理事会で計算書類等を承認し、定時評議員会の招集を決定。6月の定時評議員会で計算書類の承認や役員の選任を行います。
  • 6月末以降の事務:
    所轄庁への届出(財務諸表等電子開示システムへの入力)や、法務局での登記(資産の総額変更、役員変更など)を済ませます。

【ココ+ナビからの実務アドバイス】
令和7年度より、保育施設に関しては「ここdeサーチ」へ経営状況の報告を8月末までに行う必要があります。未提出の施設には通知が行っているようですが、報告内容に誤りのある施設様も多く見受けられました。新しい取り組みで少し分かりづらかったため、今年度報告の際には今一度マニュアル等をご確認ください。また、令和8年度からは未報告施設は減算の対象となりますので忘れないように注してください。


4. 運営の「質」を高める下半期(7月~12月)

夏を過ぎると、大きな法的手続きは一段落しますが、ここからの過ごし方でその後の余裕の差を生みます。

  • 予算管理(予実管理)
    3月に作った予算通りにお金が使われているか、毎月チェックしていますか? 「期末に見たら大赤字だった!」とならないよう、四半期に一度は試算表を理事会に報告し、現状を把握しましょう。
  • 補正予算(11月~12月頃)
    冬のボーナス時期や、急な修繕が発生した場合は、予算の修正(補正予算)を行います。当初予算と同じく、理事会の承認が必要です。もちろん「事後承諾」は認められません。。。。

5. 監査対策の落とし穴と実務Q&A

手続きが煩雑だからこそ、現場では「ついやってしまいがちなミス」や疑問がつきものです。行政監査で確実に指摘されるポイントと、よくある質問をまとめました。

⚠ 要注意!監査で指摘されるNG行動

・理事会の「委任状」による出席
社会福祉法人の理事会では、委任状による出席や議決権の行使は法律上一切認められていません。委任状で定足数を満たしたとして決議を行うと、その決議は無効となります。
・招集手続きの省略(全員の同意がない場合)
「いつものメンバーだから」と、1週間前の招集通知を出さずに電話だけで済ませていませんか? 理事・監事の「全員の同意」がない状態で会議を開くと、手続き違反となります。

  • 会議の直前に理事が急病で欠席になり、定足数を割ってしまいそうです。どうすればいいですか?

    定足数を満たさない会議は成立しませんので、延期して別の日程で再設定するしかありません。もしも、オンラインで出席が可能でしたら、定足数に含めることはOKです。

  • 「書面決議(みなし決議)」という方法があると聞きました。いつでも使っていいのでしょうか?

    みなし決議は、「議決に加わることのできる理事全員が書面等により同意の意思表示をした場合」にのみ成立します。1人でも反対、あるいは返事が間に合わなかった場合は成立しません。また、監事からの異議がないことも条件です。次年度予算や事業計画など、十分な審議が必要な重要議案においては、原則として実際に会議を開催して議論を交わすことをお勧めします。


6. 社会福祉法人としての運営(まとめ)

ここまで、1年間の流れと、特に直近の2月・3月の業務についてお話ししました。読んでいて、「うわぁ、面倒くさい……」と思われた方もいるかもしれません。

正直に言います。めちゃくちゃ面倒くさいです。私たちですら、法改正のたびに「また様式が変わったのか」と頭を抱えることがあります。

しかし、なぜ国はこれほどまでに厳格な手続きを求めるのでしょうか? それは、社会福祉法人が「税制優遇を受ける公益性の高い法人」だからです。

  • 議事録を残すことは、「密室で勝手に決めていない」という証明です。
  • 予算・決算を公開することは、「公金を正しく使っている」という証明です。

この面倒な手続きの一つひとつが、地域住民や利用者様、そして職員の方々に対する信頼の証です。だからこそ、私たち運営側は、この手続きを疎かにしてはいけません。

人手不足の中、膨大な書類作成に追われ、肝心の利用者様や職員と向き合う時間が削られてしまっては本末転倒です。しかし、この3月末までの準備をしっかり行うことで、その後の1年間が大きく変わります。

本年も、皆様の法人が地域にとってかけがえのない光であり続けることを、心より応援しております。今年一年、共に頑張ってまいりましょう!

大田黒 健太 法人運営支援・施設DX推進

Kenta Ootaguro

熊本出身
法人運営支援を主として、ICTシステム導入・認可申請支援・WEBサイト企画・認定こども園移行支援等、保育事業の幅広い支援をおこなう。

社会福祉法人支援システム ココ+ナビ プロジェクトリーダー