【第1回】社会福祉法人における「経営」とは何か?~措置制度と今~

【第1回】社会福祉法人における「経営」とは何か?~措置制度と今~

2026.01.16

【第1回】社会福祉法人における「経営」とは何か?~措置制度と今~
ココ+ナビ

理事長・施設長・事務長様
株式会社幼保支援 法人運営支援/施設DX推進担当の大田黒です。
理事会や評議員会の開催準備、そして終わった後の議事録作成。日々の現場対応に追われる中で、この手続き、本当に面倒ですよね。お気持ち、痛いほどよくわかります。

「とりあえず前回の議事録をコピペしておけばいいか」と思いがちですが、行政監査で一番細かくチェックされるのが、この「手続きの適法性」です。

今回は、現場の事務負担を減らしつつ、監査で絶対に指摘されないための「手続きと議事録作成の極意」を、法律の知識を噛み砕いてお伝えします。そのまま使える議事録の記載例も用意しましたので、ぜひ実務にお役立てください。


1. 基礎知識:なぜ手続きと議事録がそこまで重要なのか

社会福祉法人の運営において、理事会や評議員会の議事録は「ただの会議の記録」ではありません。法律上、法人の意思決定が適正に行われたことを証明する唯一かつ絶対的な証拠書類です。

行政の監査(指導監査)では、事業計画や予算、決算、高額な設備投資などが、正しい手続きを経て決議されているかを必ず確認されます。もし、議事録に不備があったり、開催手続きに瑕疵(欠陥)があったりすると、最悪の場合、その決議自体が無効とみなされるリスクがあります。

具体的に、どのような場面で厳密な手続きと議事録が求められるのでしょうか。よくあるケースを挙げてみましょう。

  • 毎年の決算承認: 計算書類等の承認は、理事会で承認を得た後、定時評議員会で承認・報告を受ける必要があります。
  • 役員の改選: 理事や監事の選任は評議員会の決議事項です。任期満了に伴う手続きの議事録は、登記変更でも必要になります。
  • 不動産の取得や処分: 法人の基本財産に関わる重大な決定は、理事会の決議だけでなく、定款の定めに従って所轄庁の承認が必要になる場合があります。
  • 多額の借入: 施設整備などのために資金を借り入れる際、金融機関から理事会議事録の提出を求められます。

このように、法人の根幹に関わる動きの裏には、必ず「正しい手続き」と「正確な議事録」が存在しなければなりません。これを怠ると、後々大きなトラブルの種になります。


2. 監査対策の要:理事会・評議員会の手続きフロー

では、監査で指摘されないための正しい手続きの流れを確認しましょう。法律用語が並ぶと難しく感じますが、基本のステップを押さえれば大丈夫です。ここでは理事会を例に解説します。

  1. 招集の決定(理事長)

    理事会をいつ、どこで、何の議題で開催するかを理事長が決定します。通常、事務長が日程調整を行い、理事長に提案する形が多いですよね。

  2. 招集通知の発送(開催日の1週間前までに)

    ここが最初の関門です。社会福祉法では、理事会の招集通知は開催日の1週間前までに各理事及び監事に対して発しなければならないと定められています。定款でこれを短縮することも可能ですが、原則は1週間前です。「昨日電話で呼んだ」は通用しません。

    • 【ベースとなる法律】社会福祉法 第45条の14 第9項この条文で「社会福祉法人の理事会の運営については、一般法人法のルールを準用します」と定めています。
    • 【具体的なルール】一般法人法 第94条 第1項「理事会を招集する者は、理事会の日の一週間(これを下回る期間を定款で定めた場合にあっては、その期間)前までに、各理事及び各監事に対してその通知を発しなければならない。」
  3. 理事会の開催と決議(定足数の確認)

    理事会が成立するためには、議決に加わることができる理事の過半数が出席する必要があります(定足数)。会議の冒頭で必ず出席者数を確認し、定足数を満たしていることを宣言してください。

  4. 議事録の作成

    会議が終わったら、遅滞なく議事録を作成します。誰が何を提案し、どのような意見が出て、最終的にどう決議されたのか、経過の要領と結果を明確に記載します。

  5. 署名または記名押印

    出席した理事および監事は、議事録に署名または記名押印しなければなりません。定款で「出席した代表理事(理事長)および監事」などに限定している場合もありますが、監査対策としては定款の規定を正確に守ることが必須です。


3. 注意点(NG行動):監査で一発アウトになる落とし穴

実務の現場で「効率を重視するあまり、ついやってしまいがちなミス」があります。以下のポイントは、監査官が必ずチェックする箇所ですので、絶対に避けてください。

⚠ 委任状による理事会への代理出席

「今日はどうしても行けないから、理事長に一任するよ」という委任状。町内会や一般的な会議ではよく見かけますが、社会福祉法人の理事会では、委任状による代理出席は法律で認められていません。理事は自身が選ばれた責任において、自ら決議に参加する必要があります。委任状で定足数を満たしたことにして決議を行うと、その決議は無効になります。

⚠ 特別利害関係人の議決権行使

審議する議案について、特別の利害関係を持つ理事は、その議案の議決に加わることができません。例えば、理事長個人の土地を法人が買い取る議案や、特定の理事の報酬を決める議案などです。この場合、その理事は退室するなどして決議から外れ、その理事を除いた人数で過半数の賛成を得る必要があります。議事録にも「特別利害関係人である○○理事は退室し〜」と明記しなければなりません。

⚠ 決議の省略(みなし決議)の乱用

理事が全員書面やメールで賛成の意思表示をした場合、実際に会議を開かずに可決したとみなす「みなし決議」の制度はあります。しかし、これはあくまで例外的な措置です。監査では「なぜ集まって議論しなかったのか」という合理的な理由が問われます。重要な案件(決算承認など)をみなし決議で済ませるのは、ガバナンスの観点から非常に心証が悪くなります。


4. 【保存版】そのまま使える実務フォーマット・記載例

事務担当者の皆様、お待たせしました。行政の指導監査に耐えうる、理事会議事録の具体的な記載例をご用意しました。このままコピーして、法人の実情に合わせて穴埋めするだけで、しっかりとした議事録が完成します。

📄 令和○年度 第○回 理事会議事録 記載例

1. 開催日時: 令和○年○月○日(○) 午前○時○分 ~ 午前○時○分
2. 開催場所: 社会福祉法人○○ 法人本部 会議室
3. 理事・監事の数及び出席状況:
  理事総数 ○名(うち出席理事○名、欠席理事○名)
  監事総数 ○名(うち出席監事○名、欠席監事○名)
  出席理事氏名: ○○ ○○、○○ ○○、○○ ○○
  出席監事氏名: ○○ ○○

4. 議長の氏名: 理事長 ○○ ○○

5. 議事の経過の要領及びその結果:
※定足数確認の文言を必ず入れること
 定刻に至り、理事長が議長に就任した。議長は理事会の成立を確認するとともに、理事長および出席した監事を議事録署名人に任命して理事会の開会を告げて議事に入った。また、審議に先立ち決議事項に特別の利害関係を有する理事の有無を確認した結果、本日の議案について該当する理事はいない旨が報告された。
【第1号議案】令和○年度 事業報告及び決算報告承認の件
議長は、令和○年度の事業報告書及び計算書類等について、事務局長 ○○ ○○ に詳細を説明させた。その後、監事 ○○ ○○ から、監査の結果、法人の業務及び財産の状況は適正に処理されている旨の監査報告があった。
議長が本案について質疑を求めたところ、特段の質問や意見はなく、採決を図った結果、出席理事全員の賛成をもって、原案どおり承認可決された。

(その他の議案があれば同様に記載)

以上をもって本日の議事を終了したため、閉会を宣言した。
上記の決議を明確にするため、この議事録を作成し、出席した代表理事及び監事が記名押印する。

令和○年○月○日
社会福祉法人○○ 理事会
議 長 印
監 事 印
(※定款の定めに従い、出席した全理事の押印が必要な場合は全員分を記載)

ポイントは、「誰が説明したか」「監事の報告があったか」「質疑応答はあったか」「どういう結果(全員賛成か、賛成多数か)になったか」を明確にすることです。「異議なし」の一言で済ませず、しっかり文章に残していただくのがおすすめです。


5. 現場からのSOS!実務Q&A

私が支援させて頂く中で、事務長さんたちからよく受ける質問を3つピックアップしました。

  • 理事会の招集通知は、メールで送っても問題ないですか?

    原則は「書面」ですが、理事が事前に承諾している場合は「電磁的方法(メールなど)」での通知も法律上認められています。ただし、監査対策としては、各理事から「メールでの招集通知を承諾する」という同意書をあらかじめもらって保管しておくことが確実です。

  • 議事録の作成期限って、法律で決まっているのでしょうか?

    社会福祉法には「何日以内に作成しなければならない」という明確な日数の規定はありません。法律上は「遅滞なく作成し〜」とされています。しかし、実務上は記憶が鮮明なうちに、遅くとも会議終了後1〜2週間以内には作成し、署名・押印をもらうのが通常です。

  • Web会議(Zoomなど)で理事会を開催した場合、議事録の書き方に違いはありますか?

    開催場所や出席状況の書き方に工夫が必要です。開催場所は法人本部とした上で、出席状況の欄に「○○理事はテレビ会議システムを用いて出席」と明記します。また、会議の冒頭で「映像と音声の送受信により、相手の状態を相互に認識しながら通話できる状態であること」を確認した旨を議事の経過に記載すると、適法なWeb会議であることをアピールできます。


6. この記事のまとめ

いかがでしたでしょうか。今回は、社会福祉法人の理事会・評議員会における手続きと議事録作成のポイントについてお話ししました。

  • 議事録は法人の適正な運営を証明する絶対的な証拠であること。
  • 招集通知の期限や定足数の確認など、法律に沿った手順を省かないこと。
  • 委任状による代理出席など、監査で指摘される行動を避けること。
  • 議事録には、結果だけでなく議論の流れを記載すること。

面倒に感じる書類作成や手続きですが、これらをルール通りに粛々とこなすことが、結果的に法人を守り、理事長や施設長が安心して経営の意思決定に集中できる環境を作ります。

皆さんの法人の直近の議事録、要件を満たして書かれていますか? ぜひ、次回の会議準備の際に、見直してみてください

大田黒 健太 法人運営支援・施設DX推進

Kenta Ootaguro

熊本出身
法人運営支援を主として、ICTシステム導入・認可申請支援・WEBサイト企画・認定こども園移行支援等、保育事業の幅広い支援をおこなう。

社会福祉法人支援システム ココ+ナビ プロジェクトリーダー