【第3回】理事会運営の適法性チェック~「前年踏襲」からの脱却~

【第3回】理事会運営の適法性チェック~「前年踏襲」からの脱却~

2026.02.02

記事内容

ココ+ナビ

理事長・施設長様
株式会社幼保支援 法人運営支援/施設DX推進担当の大田黒です。
今週のテーマは、法人の業務執行機関である「理事会」です。
今週は、理事会を単なる儀式から、実質的な「経営会議の場」に変えるためのポイントを解説します。


目次

はじめに:その理事会、形骸化していませんか?

なぜ理事会が必要なのか?

実務の落とし穴①:招集手続きの省略と「みなし決議」

実務の落とし穴②:特別利害関係人の扱い

実務の落とし穴③:議事録は「録音の書き起こし」ではない

まとめ:理事会を「経営会議の場」にする


1. はじめに:その理事会、形骸化していませんか?

皆さんの法人の理事会は、こんな風景ではありませんか?

  • 事務局長が資料をひたすら読み上げる。
  • 理事長が「何か質問は?」と聞く。
  • 「異議なし」「結構です」という声だけが響く。
  • 15分で終了し、お弁当を配って解散。

いわゆる「シャンシャン理事会」です。 平和で良いことのように思えますが、何も決めていない、議論していない理事会に、わざわざ外部の有識者を集めるコスト(報酬や時間)をかける意味があるのでしょうか?

もちろん、法人の制度上、理事会を開催しないといけないから仕方なく開催しているという側面も分かります。しかし、せっかく理事会を開催するのであれば、有効活用することを考えてみませんか?


2. なぜ理事会が必要なのか?

そもそも、なぜ理事会が必要なのでしょうか? それは、理事の「暴走」を防ぐためです。

社会福祉法人は公的な存在です。理事の所有物ではありません。 しかし、強いリーダーシップを持つ理事ほど、独断で物事を進めがちです。

理事会は、各理事が「ちょっと待った」をかける場所です。 理事会で議論し、過半数の賛成を得なければ物事を進められないという「プロセス」そのものが、重要なのです。


3. 実務の落とし穴①:招集手続きの省略と「みなし決議」

ここからは実務的な話です。適法な手続きを経ていない理事会決議は、最悪の場合「無効」となり、後からひっくり返されるリスクがあります。

  • 招集手続き: 原則として、通常は開催の1週間前までに、日時・場所・議題を記載した通知を理事・監事全員に出さなければなりません。 「いつものメンバーだから電話でいいよ」はNGです。 ただし、理事・監事全員の同意がある場合に限り、招集手続きを省略できます。
    この同意というのは、口頭で確認をおこない、議事録に残すことでも良しとされておりますが、実務の上では、招集手続き省略の同意書を記載してもらい、議事録と一緒に保管することが望ましいです。
  • 決議の省略手続き:書面で理事全員の同意と監事全員からの異議がないことが確認できる場合には、理事会を開催せずに決議があったこととみなすことができます。これを決議の省略と呼びます。実務の上では、理事全員から決議省略の同意書、監事全員から決議省略の確認書を記載してもらい、議事録と一緒に保管することが望ましいです。

    一人でも反対したりすれば成立しません。また、定款に「理事会の決議の省略ができる」旨の定めが必要です。 さらに注意すべきは、「理事長・業務執行理事の職務執行状況報告」は、省略ができません。 必ず対面(実際に開催)で報告しなければなりません。議事録も決議省略を行った際の記載方法が存在します。決議省略を行った際の議事録作成を忘れてしまう方もいらっしゃるので注意してください。

4. 実務の落とし穴②:特別利害関係人の退室

理事会でよくあるミスが、「特別利害関係人」の参加です。

例えば、「理事長が所有する土地を、法人が買い取る」という議案。 この時、理事長は「売主」としての個人的利益と、「買主(法人)」の代表としての立場が対立します(利益相反)。 この議案の決議において、理事長は「特別利害関係人」となり、議決権を行使できません。もし、理事長が議決権を行使したら、その決議は無効になる可能性があります。また、議論への影響力を排除するため、審議及び決議の間は退室することが望ましいとされています。

議事録には、「理事長〇〇は特別利害関係人に該当するため退席し、〇〇が議長代行を務めた」と記載して頂くとよろしいかと思います。

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特別の利害関係者の退席については、必ず退席しなければならないという規定はないのですが、正な審議を確保する観点から、決議の際には退席することが強く推奨されます。 このあたりの解釈的な判断が多く存在することが、理事の方々を悩ませる要因になっていますよね。


5. 実務の落とし穴③:議事録は「録音の書き起こし」ではない

「議事録を作るのが大変で…」という事務局の嘆きをよく聞きます。 一言一句を書き起こす必要はありません。議事録の役割は、「決定事項」と「決定に至るプロセス(誰が何と言ったか)」の証拠を残すことです。

「異議なし」で終わることも有れば、「質問や意見」が出ることも有ります。その際には、発言の内容を議事録に残すことこそが、議事録を作成するうえで重要なポイントです。。

また、署名・捺印も重要です。 出席した理事・監事が署名(記名押印)しなければなりませんが、オンライン開催や、みなし決議の場合の署名ルールも細かく決まっています。電子署名も認められつつありますが、定款や運営細則での規定整備が必要です。


6. まとめ:理事会を「経営会議の場」にする

 

良い理事会とは、どんな理事会でしょうか?

 

私の考える良い理事会とは、識見を持つ各理事が意見を述べることで、それぞれが新たな視点を持ち、経営・運営に取り組むことのできる環境だと考えます。地域の観点から、経営の観点から、施設運営の観点から、それぞれの立場からの意見が法人を強くすると思っています。

法的手続きは土台に過ぎません。その土台の上で、未来の話をすること。 外部理事の専門性(弁護士、税理士、地元企業の経営者など)をフル活用し、多角的な視点から経営課題を議論する。

先生方の考える良い理事会とは、どんな理事会でしょうか?

 


大田黒 健太 法人運営支援・施設DX推進

Kenta Ootaguro

熊本出身
法人運営支援を主として、ICTシステム導入・認可申請支援・WEBサイト企画・認定こども園移行支援等、保育事業の幅広い支援をおこなう。

社会福祉法人支援システム ココ+ナビ プロジェクトリーダー