【第5回】社会福祉法人の監事監査
2026.02.24

理事長・施設長様
株式会社幼保支援 法人運営支援/施設DX推進担当の大田黒です。
社会福祉法人の監事に就任された方の中には、「福祉や会計の専門家ではないため、具体的に何をどう確認すればよいか迷っている」という声が少なくありません。
しかし、社会福祉法の改正に伴い法人のガバナンス強化が求められる中、監事の役割は従来の「決算書への確認」といった形式的なものから、法人がルールに従って適切に運営されているかを確認する「適法性監査」へとシフトしています。
本記事では、限られた時間の中で実効性のある監査を行うために、監事が実務上確認すべき具体的なポイントを解説します。
タイトル
1. 監事監査とは
2.実地監査前の「事前準備」と資料要求
3.実地監査
4.「監査報告書」の作成
1. 監事監査とは
監事の監査業務は、大きく「業務監査」と「会計監査」に分かれます。
「業務監査」とは、「法令や定款、理事会の決定事項に従って、適正に組織が運営されているか」を確認する作業です。監事には善管注意義務(役員として当然払うべき注意義務)があり、重大な法令違反や不適切行為を看過した場合、法的責任を問われる可能性がある点は、実務として認識しておく必要があります。
「会計監査」とは、専門家(公認会計士や税理士など)が関与している法人の場合、会計処理の正確性については専門家の知見を借りることができます。そのため、会計士監査を行われている法人に関しては、「会計監査」は不要です。

施設の加算を活用して外部監査を行われている法人様も多いのではないでしょうか。その場合は、監事監査での会計監査の省略や、所轄庁によっては会計監査の省略や期間の延長などの所謂特例が存在します。
2.実地監査前の「事前準備」と資料要求
監査の質は、当日のヒアリングや現場確認よりも、事前の資料確認で大きく決まります。実地監査の2週間前には法人へ以下の資料を要求し、目を通しておくことが基本となります。
自治体によっては監事監査のチェックシートを準備している所もありますので、活用してください。
1. 法人運営
主な確認書類
・定款、定款細則 等
・登記簿謄本
・役員等報酬規程
・理事・監事・評議員の就任についての書類一式
・理事会の招集通知と議事録
・評議員会の収集通知と議事録
・苦情対応規程等、苦情公表の取り組み
・指導監査資料
・その他
2. 財務
主な確認書類
・経理規程
・支予算書
・資金収支計算書・事業活動計算書・貸借対照表
・附属明細書・財産目録
・契約書・伺い書
・通帳・残高証明書
・その他
3.実地監査
1.業務監査
- 直近1年間の「理事会議事録」および「評議員会議事録」
確認ポイント: 招集の方法、期間、決議の内容、議事録の記載事項を満たしているか。また、議案に対して理事から質疑応答が行われた形跡が議事録に残っているか(形骸化していないか)を確認します。 - 理事・監事・評議員の「就任についての書類一式」
確認ポイント:役員等の要件、関係性が問題ないか、必要書類として、履歴書・就任承諾書・誓約書等が揃っているかを確認します。 - 所轄庁による直近の「指導監査結果通知書」と「改善報告書」
確認ポイント: 行政から指摘された事項に対し、法人が期限内にどのような改善策を講じたかを確認します。 - 「事故報告書」および「苦情対応記録」
確認ポイント: 苦情について公表の取り組みがなされているか、「現場で起きた事象が正しく報告される仕組み(内部統制)が機能しているか」を確認します。
2.会計監査
- 「経理規程」および「契約書・伺い書」
確認ポイント:経理規程を基に、規程の通りに契約行為ができているか、必要書類がそろっているかを確認します。 - 資金収支計算書・事業活動計算書・貸借対照表・財産目録 等
確認ポイント: 予算執行や、計算書類が適正に作成されているかを確認します。
4.「監査報告書」の作成
理事長や施設長へのヒアリングを行い、その結果を「監査報告書」としてまとめます。
1. ヒアリング
- 書類をチェックした中で、疑問点や不確かな点を問うオープンな質問を行います。
2. 監査報告書への「追記情報(強調事項)」の記載
監査報告書は「~適正に示しているものと認めます。」「~違反の事実は認められません。」といった定型文で構成されますが、実務においては、気づいた課題を「監査意見」として末尾に記載することが、法人運営の改善に繋がります。
記載する際は、単なる欠点の指摘ではなく、次年度に向けた「前向きな改善の促し」として表現します。
【記載例】
- 「利益相反取引に該当する契約については適正な手続きが確認されたが、透明性をより高めるため、今後は複数社からの相見積もりを徹底し、理事会資料に添付されたい。」
- 「各施設の小口現金の管理について、一部で管理者と記帳者の分離が不十分な箇所が見受けられた。内部統制の観点から、業務フローの再確認とルールの徹底を望みます。」
こうした内容を、報告書を正式に提出する前に理事長等と共有しておくことで、次回の監査時にその進捗を確認することが可能になります。
