【第12週】補正予算のタイミング – ココ+ナビ
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【第12週】補正予算のタイミング

【第12週】補正予算のタイミング
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理事長・施設長・事務長様
株式会社幼保支援 法人運営支援/施設DX推進担当の大田黒です。
「予算を超えたら、決算のときに帳尻を合わせればいい」——実務上はそうなりがちですが、社会福祉法人にとって、予算を超えたまま執行するという行為は、実は理事会から委任された権限の範囲を超える行為なんです。今日は、流用と補正予算の使い分けを、実務目線で整理します。


1. 予算準拠の原則とは何か

社会福祉法人の収入の財源は、税金や介護報酬という公共性の高い資金の集合体です。だからこそ、その使い道を最終的に決められるのは理事会だけ、という建て付けになっています。理事長は理事会が承認した予算の範囲内で執行する権限を委任されているにすぎず、この考え方を予算準拠の原則と呼びます。

予算は毎会計年度開始前に理事長が編成し、理事会の承認を得て確定します。すべての収入・支出は、この承認された予算に基づいて経理することとされており、予算に編入されていない支出を先に行うことは、想定されていません。

ここで押さえておきたいのは、予算超過は単なる会計上の数字のズレではないという点です。理事会から委任された執行権限を、理事長が独断で超えて使ったという考え方になります。予算を超過している場合に監査で指摘される理由が、ここにあります。

  • 予算にない支出を、理事長の判断だけで実行してしまう → 原則から外れる
  • 資金収支予算書を拠点区分ごとに編成し、勘定科目を資金収支計算書に準拠させる → 求められている姿
  • 予算と実績のズレが軽微なら、その都度の補正までは不要 → 許容される範囲

予算制度の根拠は1つの規程だけでできているわけではありません。厚生労働省の課長通知(運用上の留意事項)が全法人共通のルールを示し、法人の定款が予算承認者(理事会、税制優遇の対象法人では評議員会も含む)を定め、経理規程がそこに具体的な運用ルールを補足するという3層構造になっています。決算のときになって慌てないためには、この3層のどこに何が書かれているかを事務長が把握しておく必要があります。

厚生労働省:社会福祉法人会計基準

厚生労働省:社会福祉法人経理規程例


2. 予算の3階層と権限の使い分け

予算管理の勘定科目は、大区分・中区分・小区分という3層構造になっています。この階層のどこで動かすかによって、誰の承認で足りるかが変わります。

  • 大区分:人件費支出、事業費支出、事務費支出といった大枠。ここをまたぐ変更は補正予算の対象で、理事会承認が必要になる。
  • 中区分:大区分の内訳にあたる勘定科目(例:職員給料支出、給食費支出など)。同一拠点区分内であれば、中区分間の流用は理事長の決裁で対応できる。
  • 小区分:中区分をさらに細分化した明細レベル。法人の経理規程で任意に設定する法人が多く、運用の自由度が最も高い。

実務でよくある誤りは、「理事会を通さずに大区分から大区分に動かす」というものです。大区分をまたぐ流用(たとえば人件費支出から事業費支出への振り替え)は、この整理では認められていません。人件費と事業費という性質の異なるお金を、理事長の一存で入れ替えることになるためです。

社会福祉法人の事業の収支は安定することが多いため(前年度をなぞることが多いため)当初予算をしっかり立てれば、予算の立て直しはあまり起こりません。基本的には一時的なもの(突発的な物品の購入や修繕・急な職員採用等)に限定されれると思います。


3. 予算超過が見えたときの対応フロー

期中に「このままでは予算を超えそうだ」という状況になったとき、対応には優先順位があります。いきなり補正予算を組むのではなく、次の順番で検討してください。

  1. 同一拠点区分内・中区分間の流用で吸収できないか確認

    他の中区分に予算の余りがあれば、そこから融通する。理事長の決裁で完結し、迅速に対応できる。

  2. 予備費が計上されていれば、その充当を検討

    不測の支出に備えてあらかじめ計上している予備費があれば、そこから充てることも選択肢になる。

  3. 大区分をまたぐ場合、または乖離が大きい場合は補正予算を編成

    理事会に諮り、補正予算として正式に承認を得る。この手続きを経て初めて、その支出は「予算内」になる。

  4. 流用・補正の記録を残す

    誰が、いつ、どの科目からどの科目へ動かしたかを記録し、決算時にまとめて説明できるようにしておく。

この順番を守らずにいきなり支出を先行させてしまうと、後づけで理由を探すだけの作業になり、理事会にとっても実質的な承認の意味が失われてしまいます。逆にこの順番が組織に根づいていれば、実務担当者が「予算が足りなくなりそうだ」と気づいた時点で、理事長へ報告することで補正予算の議案そのものも早い段階で準備できるようになります。


4. 権限を超えた流用・専決のNGライン

⚠ 「同じ財布だから」は通用しない

大区分をまたぐ流用は、理事長の専決事項ではありません。人件費支出から事業費支出への振り替えのように性質の異なる区分間で資金を動かす場合は、必ず理事会の補正予算承認が必要です。「同じ法人の予算なのだから、多少動かしても問題ないだろう」という感覚のまま処理を続けると、て監査で指摘対象になります。

もう1つのNGパターンが、予算超過を執行してから、事後的に補正予算で正当化するという順序の逆転です。物価高騰で光熱水費が想定を超えた、急な修繕が必要になったといった事情自体はやむを得ない場合が多いのですが、「使ってしまってから、後で理事会に説明して補正する」という流れが常態化すると、理事会の予算承認そのものが形骸化します。補正予算は、支出を実行する前に理事会の議決を経てこそ意味を持ちます。特に大きい出費に関してはそもそもが契約についての理事会承認が必要なため、その時に併せて補正予算決議を行うようにフローを組んでおくと後々慌てる必要がなくなります。


5. 流用・補正予算の決裁区分

📄 理事長決裁か理事会承認か

中区分間の流用(同一拠点区分内):理事長決裁で対応可。ただし経理規程に定める起案・決裁の記録は必須。

予備費の充当:理事長決裁で対応可。充当した使途・金額を記録し、決算時に一覧化しておく。

大区分をまたぐ変更・大幅な乖離:補正予算として理事会の承認が必須。事前の議決を原則とする。

この整理を経理規程に明文化しておくと、担当者が変わっても判断基準がぶれません。特に「中区分間の流用」と「大区分をまたぐ変更」の境目は現場で混同されやすいため、規程に大区分・中区分の勘定科目一覧を別表として添付しておくと実務上の迷いが減ります。

あわせて、流用や予備費充当の記録は「起案日」「起案者」「対象科目」「金額」「理由」「決裁日」を最低限の項目として様式化しておくと、決算時にまとめて説明資料へ転記しやすくなります。理事長決裁で完結する案件だからこそ、記録を軽視すると監査で経緯を説明できなくなるので注意してください。


6. 実務Q&A

  • 補正予算は、いつまでに理事会承認を得ればよいのですか。

    該当年度中は可能ですが、実務上は、3月開催の理事会で、翌年度の当初予算と当該年度の最終補正予算を同時に承認するのが現実的だと思われます。

  • 乖離が小さければ、補正予算を組まなくてもよいのですか。

    法人の運営に支障がない軽微な乖離であれば、そのつど補正予算を組む必要はないとされています。ただし「軽微」の基準は経理規程で定めておくべき部分であり、感覚だけで判断すると監査時に説明に窮します。金額でのしきい値を、あらかじめ規程に落とし込んでおくと良いかと思います。

  • 予備費はどのくらい計上しておくのが一般的ですか。

    法令上の決まった割合はなく、法人の規模や過去の乖離実績を踏まえて経理規程で自主的に定めるものですが、無理のない範囲で設定してください。計上額が過大だと、それ自体が予算の精度を疑われる原因にもなります。

  • 拠点区分をまたいだ予算の融通は、流用として扱えますか。

    扱えません。ここで説明した流用は、あくまで同一拠点区分内での中区分間の話です。拠点区分をまたぐ資金の動きは、そもそも予算流用ではなく区分間繰入れ・繰替使用という別の会計ルールの対象になります。予算の話と拠点間の資金移動の話を混同しないよう、切り分けて考えてください。


7. この記事のまとめ

予算は当てずっぽうの見積もりではなく、理事会から理事長への執行権限です。

次に予算オーバーの兆候に気づいたときは、まず「予備費を使用すべきか、予算流用で良いか、それとも理事会に諮るべき話か」を最初に切り分けてみてください。その一手間が、決算期の慌ただしい補正作業を減らしてくれます。

予算管理が甘い法人ほど、決算間際になって数字のつじつま合わせに追われがちです。逆に言えば、この3段階の使い分けを職員全員が理解しているだけで、理事会に諮る議案の質も、日々の経理処理のスピードも変わってきます。

大田黒 健太 法人運営支援・施設DX推進

Kenta Ootaguro

熊本出身
法人運営支援を主として、ICTシステム導入・認可申請支援・WEBサイト企画・認定こども園移行支援等、保育事業の幅広い支援をおこなう。

社会福祉法人支援システム ココ+ナビ プロジェクトリーダー

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