
「経営情報の見える化」制度が始まり、ここdeサーチへの入力マニュアルを開いてみたものの、「注釈が多すぎて結局どう入力すればいいか分からない!」と頭を抱えていませんか?
しかもこの報告、令和8年度からは未報告のままだと基本分単価の減算調整というペナルティが科されます。とても大事なことですが非常に分かりづらく、同じような報告を各所に行っている為、先月から園の先生方と毎度この報告の意味について愚痴りあっています。今回は、ココdeサーチ経営状況の完全ガイドを作ろうと意気込み筆を執りましたが、途中で膨大なテキスト量になる事に気づき、実際に報告の支援をする中でなんだかなーと思う点も多く、ネガティブな内容が多くなりましたので、バッサリ簡略化し、社員日報送りになりました。
でも私、あの120Pのスライドと80を超えるFAQを読みましたので、少しだけの文句をお許しいただければと思います。
1. 基礎知識:なぜ今「経営情報の見える化」なのか?
まずは、今回の制度がなぜ始まり、社会福祉法人にとってどのような影響があるのか、前提となる知識を整理しておきましょう。
制度の目的は「透明性の確保」と「保護者・求職者の選択支援」
国がこの制度を導入した主な目的は、公定価格(国民の税金や保険料)が現場の職員の処遇改善などにしっかりと行き渡っているかを検証するためです。しかし、それだけではありません。報告されたデータは「ここdeサーチ」というシステムを通じて、一般の保護者や保育士などの求職者に向けてインターネット上で公開されます。
つまり、「うちの法人はこんなに働きやすくて、職員にもしっかり還元していますよ」とアピールする絶好の場になる一方で、「この施設は人件費にお金をかけていないのでは?」と誤解されてしまう場にもなり得るということです。だからこそ、表面的な入力ではなく、ルールを理解した正確な申請が求められます。
対象となる施設とスケジュール
原則として、子ども・子育て支援法に基づく「施設型給付・地域型保育給付」を受けるすべての施設・事業者が対象です。一方、認可外保育施設や企業主導型保育事業などは公定価格により運営される施設ではないため、対象外となります。
報告のタイミングは、「毎事業年度終了後5ヶ月以内」です。例えば、3月決算の社会福祉法人であれば、8月末までに報告を完了させる必要があります。令和8年度からは、未報告の場合、基本分単価の減算調整措置が適用されるため、後回しにするのは法人の経営上、非常にリスクが高いと言えます。

(引用:こども家庭庁 こども家庭庁成育局保育政策課資料)
2. 報告内容
まず大前提として絶対に押さえておかなければならないのが、今回の報告の基準となる期間です。令和7年度に行う報告は、原則として4月1日から翌年3月31日までの期間を対象としています。また、システム上には期間の指定が特に書かれていない報告事項も多数存在します。例えば、人員配置の人数やモデル給与の起点日などです。こうした「いつの時点の数字を入れるべきか書かれていない項目」については、基本的に事業年度の最終日である3月31日(実務上は3月1日)時点の情報を記載するというルールになっています。
この大前提を踏まえた上で、マニュアルをさらっと読んだだけでは実務担当者が確実に迷い、入力エラーを連発してしまうポイントを深く掘りしていきます。
①:【人員配置】「公定価格基準」の入力
システムにログインして人員配置の入力画面を開くと、「公定価格基準」と「実際の配置」という二つの入力エリアが並んで表示されます。ここでほとんどの方が最初に「公定価格基準の欄には、何を入れればいいのか?」と止まります。ここには、国が定める留意事項通知などに基づき、自園が取得している加算や利用定員に照らし合わせて「本来配置すべき標準的な人数」を計算して入力しなければなりませんが、入力欄が整理されておらず非常に分かりにくいです。
例えば、副園長・教頭配置加算が適用されている施設であれば、常勤の欄に「1」と入力し、適用されていない場合は「0」と入力します。事務職員配置加算や指導充実加配加算などが適用される場合も同様に、非常勤の欄に「0.8」と入力するなど、取得している加算の状況によって入力すべき数値が1であったり0.8であったり、あるいは0.5であったりと細かく決まっています。マニュアルには計算式が書かれていますが、それを読み解いて自園の状況に当てはめる作業は非常に骨が折れます。さらに、先ほどお伝えした通り、ここで入力する「実際の配置」人数などはすべて3月31日時点の正確な数値でなければなりません。途中で退職した人をうっかり含めてしまったり、育休と産休の取扱が異なったり(産休は含め、育休は除外する)、3月末時点の正確な人事データを用意してから入力に臨むことが不可欠です。 が、 ルールが細かくマニュアルを見ても分かりづらいです。児童数の報告を行うので、取得している加算を選ばせる形で自動計算させてもらえれば非常にスムーズに正確な情報が取得できますし、施設側は、実際の配置人数を入力するだけなので事務負担の軽減になるのではと思います。
②:【職員給与】実績報告からの転記エラーと非常勤の経験年数
次に頭を抱えるのが職員給与の入力画面です。マニュアルや案内には「自治体に提出した処遇改善等加算の実績報告書(賃金改善明細書)を参考に転記してください」という趣旨のことがとても簡単に書かれています。これを見ると「なんだ、エクセルの数字をそのままコピペすれば終わるのか」と安心してしまうのですが、微妙にそうではありません。
まず一つ目の壁が、職種や職名の入力規則エラーです。実績報告書を作成する際、多くの法人は独自のリーダー職名や、法人内だけで通用するローカルな名称を使っているはずです。しかし、ここdeサーチのシステムには入力規則(プルダウンの選択肢)が厳密に設定されており、実績報告書で使っていた独自の職名をそのまま入力しようとしても、システム側と一致せずにエラーで弾かれてしまいます。つまり、実績報告書のデータをそのまま写すことはできず、システムの入力画面にある職種・職名の定義を一つ一つ確認し、自園の職名がシステムのどれに該当するのかを翻訳して当てはめ直すという、非常に手間のかかる作業が発生するのです。職種を指定する意味はあるのでしょうか?集計して何かに活用して頂いているのでしょうか?そうと願うばかりです。
そして二つ目の壁が、非常勤職員の経験年数の報告です。正社員(常勤)の経験年数は人事データでしっかり管理している法人が多いと思いますが、見落としがちなのがパートやアルバイトといった非常勤職員についても、同様に経験年数の報告が必須であるという点です。しかも、自園での勤続年数だけでなく、過去に別の保育施設等で働いていた年数もすべて合算しなければなりません。その上で「10.8年」のように、月数を12で割って小数点第1位まで算出して入力するという細かいルールまであります。入力期限の直前になって「過去の勤務年数がわからない!」と慌てないよう、早いうちに対象となる非常勤職員へヒアリングを行っておくなどの事前準備が明暗を分けます。 が、 それ以前に非常勤の方の経験年数管理しておく理由が施設側に無いので、そもそも管理している施設は非常に少ないのではないでしょうか。

宣伝ですがココ+ナビの職員管理機能では、非常勤を含めた各職員の過去の職歴の管理から、該当職員の経験年数や、指定した職員の平均経験年数をダッシュボード画面で管理することが可能です。
③:【収支の状況】表記揺れの混乱と決算書超えの細分化、そして使いにくいExcel
最後に立ちはだかるのが、収支の状況に関する事項です。マニュアルには「事業活動計算書を元に報告してください」とサラッと書かれていますが、実際にシステムの入力画面を開くと、はい、はてなマークです。
まず直面するのが、画面上の表記揺れによる混乱です。マニュアルには「事業活動計算書」を元にするよう明確に指示されているにもかかわらず、システムの入力画面を見ると、収入の部は「事業活動収入(収益)」となっているのに、費用の部は「サービス活動増減の部(費用)」という表記になっています。「あれ?うちの決算書のどこの数値を引っ張ってくればいいんだ?」まず迷います。
さらに、決算書の大科目をそのままベタ貼りすれば済むわけではないという点も大きな負担です。なぜか、一時預かり事業の項目がわけてあるので、決算書ではなく補助事業の資料を確認して入力する必要があります。費用欄では小科目の記載欄があります。つまり、完成した決算書をポンと手元に置くだけでは入力できず、総勘定元帳まで遡って数字を拾い直さないと報告用の数値が作れない謎の仕様です。※私の解釈違いがあれば申し訳ございません。
そして、これは現場の事務担当者の皆様に代わってあえて愚痴を言わせていただきますが、システムに用意されている転記用のExcelシートが非常に使いにくい仕様になっています。「手入力が面倒だからExcelテンプレートを使って一気に入力しよう」と思うのが普通ですが、このファイルはガチガチに保護がかけられています。そこまではいいのですが、入力者の事を考えられていない作りになっており、文字を大きくすると横スライドが発生してどの項目を入れているのか分からくなったりします。もう少し保護すべき場所を精査して、使い勝手の良いテンプレートにして頂けないでしょうか!
監査や理事会での報告に向けたポイント
経営情報の見える化で報告する内容は、法人の決算数字や人事データそのものです。ここdeサーチへ入力した情報と、都道府県や市区町村へ提出している決算報告書、処遇改善加算の実績報告書の数値に大きな矛盾(齟齬)があると、自治体の担当者から疑義照会(内容の確認)が入ります。
例えば、自治体は以下のようなポイントをチェックします。
- 施設の定員数に対して、報告された在籍児童数が不自然ではないか。
- 公定価格基準上の必要人員数に対して、実際の配置人数が下回っていないか。
- 収益や費用の入力桁が間違っていないか(円単位なのに千円単位で入力していないか)。
3. 【人的資本に関する事項】さながら採用サイトのよう
前半は、保育ICTの導入状況や、有給消化率、離職率、各種認定などのまあ分かる報告内容です。 が、 後半は、採用方法や、職員の満足度、ダイバーシティの取組などの記述式が続きます。報告お疲れさまでした!求職者にアピールタイムです!と言わんばかりの項目が続きます。以下入力例です
当園では、性別・年齢・経験年数にとらわれず、多様な人材が活躍できる職場づくりを推進しています。近年では子育て中の職員や定年後再雇用者の積極的な登用を進め、時短勤務や希望シフト制度を導入しています。また外国籍スタッフの受入れ経験もあり、文化的な多様性にも配慮した環境整備を行っています。今後は障がい者雇用の可能性も検討しながら、多様性を尊重する風土づくりに取り組みます。職員一人ひとりの強みを活かし合える職場づくりを目指しています。
(出典:幼児教育・保育における継続的な経営情報の見える化について 令和8年7月 資料より)
メンテナンスが必要である求職者への情報については、しっかりとした管理を行わないといけません。発信する情報が各種媒体で異なると求職者が不信感を抱く可能性があるからです。任意入力ですのでもしも報告される際には毎年内容の確認を行われてください。
4. 最後に
ここまで「ここdeサーチ」における経営情報の見える化について、実務担当者目線で思ったことを伝えました。正直に言って事務作業としては非常に煩雑で、直感では理解できないルールが山積みだと思います。また、様々な情報が公開され、保護者や求職者がスマートフォン一つで各施設の経営状況やモデル給与、人件費率などを簡単に比較できるようになりますが、90%だからいい、60%だから悪い・・・・という訳ではありません。この辺りが誤解なく伝わるのでしょうか。
長々とここまでお付き合いいただきましてありがとうございます。来年の報告時には、エクセルの使い勝手が向上し、入力が少しでも楽になっていることを密かに祈っております。
もちろん、行政の皆様は私の何倍もの時間と労力をかけて、このパズルのように緻密な制度を練り上げられたはずです。ですので、私のこの長文は「少しだけ頭を抱えすぎた担当者の独り言」として聞き流していただければと思います。
いつも地域保育のため、そして子どもたちの未来のためにご尽力いただいている皆様に、深い感謝とリスペクトを申し上げます。