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随意契約とは

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理事長・施設長・事務長様
株式会社幼保支援 法人運営支援/施設DX推進担当の大田黒です。
長年お付き合いのある業者に、毎回わざわざ他社の見積もりを取るのは気が引ける。そう感じている事務長は多いと思います。ただ社会福祉法人の運営費は、公的な給付費や補助金、税制優遇に支えられています。そのため契約については、株式会社なら問われない「なぜこの業者で、なぜこの金額なのか」を後から説明できる状態が求められるんですよね。今日は、随意契約で済ませてよい場面と、そのときに残しておくべき記録の線引きを整理します。


1. 契約ルールの土台は平成29年の入札契約通知

社会福祉法人の契約ルールのよりどころは、厚生労働省の通知「社会福祉法人における入札契約等の取扱いについて」(平成29年3月29日)です。通知は、競争入札によらず随意契約にしてよい場合を個別に列挙する形をとっています。つまり列挙に当てはまらない契約は競争入札で、というのが基本の建て付けです。

例外といっても、実務では随意契約で発注する場面のほうが圧倒的に多いはずです。通知が随意契約を認めているのは、大きく次のような場合です。

  • 予定価格が、通知の別表で定める額を超えない契約。会計監査を受けない法人なら1,000万円以下が目安です(会計監査を受ける法人は契約の種類ごとに別の上限があり、経理規程でそれより低い額を定めていればその額)
  • 契約の性質や目的が競争入札に適さない契約(特殊な技術が必要なもの、既存設備の増設、代わりのきかない物品など)
  • 緊急の必要があって、競争入札をする時間がない契約
  • 競争入札にかけるとかえって法人に不利になると認められる契約

もう1つ押さえておきたいのが理事会との関係です。通知は、重要な契約は社会福祉法第45条の13第4項にもとづいて理事会で決定し、契約の結果も理事会に報告するよう求めています。どこからが重要な契約なのかは、各法人の経理規程や定款細則の専決の範囲で決まります。

出典: 厚生労働省「社会福祉法人における入札契約等の取扱いについて」(平成29年3月29日、最終改正 令和8年3月17日)


2. 随意契約で済ませてよい場面と条件

随意契約そのものは、何も後ろめたいものではありません。ただ「随意契約にしてよい」と「1社に電話して決めてよい」は別の話です。随意契約でも、次の3つは外せないポイントになります。

  • 見積もりは原則3社以上:通知では、随意契約でも3社以上から見積もりを取って比べるのが原則とされている。下の金額以下の契約なら2社以上で差し支えない。
  • 随意契約でも予定価格を決める:見積もりを比べる前に、前年度の実績や予算をもとに「このくらいが妥当」という基準額を決めておく。基準がないと、出てきた見積もりが高いのか安いのか判断できない。
  • 理由を書面に残す:経理規程のどの条項にもとづいて随意契約にしたのかを明記し、理事長の決裁を受ける。

2社見積もりでよい金額は、令和8年3月17日の通知改正で引き上げられ、令和8年4月1日から次の金額になっています。

  • 工事又は製造の請負:400万円以下(改正前は250万円)
  • 食料品、物品等の買入れ:300万円以下(改正前は160万円)
  • 上記以外の契約:200万円以下(改正前は100万円)

随意契約にできる上限(会計監査を受けない法人で1,000万円)は変わっていません。変わったのは、随意契約の中で見積もりを2社に減らせる範囲です。ただし法人内の手続きは経理規程に従って行うので、規程に改正前の金額を書き込んでいる法人は、運用を変える前に規程を確認してください。

出典: 厚生労働省「社会福祉法人における入札契約等の取扱いについて」(平成29年3月29日、最終改正 令和8年3月17日)


3. 随意契約で発注するときの手順

少額の物品購入や保守契約を随意契約で発注する場合、流れは次の5段階です。

  1. 予算と仕様、予定価格を固める

    予算に計上されているかを確認し、何をどこまで頼むのかを仕様書やメモにまとめる。そのうえで前年度の実績などから予定価格を決める。

  2. 契約方法と根拠条項を決める

    予定価格と契約の性質から、競争入札か随意契約かを決める。

  3. 複数社から見積もりを取る

    同じ仕様書を各社に渡して見積もりを依頼する。条件をそろえないと、金額の比較が意味をなさない。

  4. 選定理由を記録し、決裁を受ける

    見積比較の結果と選定理由を随意契約理由書などにまとめ、専決規程に従って理事長の決裁を受ける。重要な契約にあたるものは理事会で決定する。

  5. 契約を結び、書類一式を保存する

    契約書や請書を交わし、見積書・理由書・決裁書類をまとめて綴じる。会計帳簿や事業に関する重要な資料は、社会福祉法第45条の24第2項により、帳簿を閉鎖した時から10年間の保存が求められている。

手間がかかるのは手順1と4です。逆にここさえ押さえておけば、見積もりを取る業者が毎年同じ顔ぶれでも、説明に困ることはまずありません。


4. 指導監査で指摘されやすい3つのパターン

契約まわりの指摘は、悪意よりも「楽をしたい」「これまでもそうしてきた」から生まれるものがほとんどです。中でも次の3つは、説明がつきにくくなるパターンです。

⚠ 発注を分けて随意契約の範囲に収める

本来1件の工事や購入を、随意契約にできる金額に収まるように何回かに分けて発注するやり方です。金額の基準を下回らせるための分割は、入札や見積もりの手続きを避けたものとして扱われます。年度内に同じ業者へ似た内容の発注が続いていると、監査では真っ先に目に留まります。

⚠ 自動更新の契約を何年も見直していない

保守契約やリース契約は、最初の契約時には見積もりを比べていても、その後は自動更新で何年も続きがちです。契約書の更新条項どおりに続いているだけで、金額や内容が今も妥当かを確かめた記録がないと、監査で経緯を聞かれたときに答えられません。毎年すべて見積もりを取り直す必要はなく、更新の時期に金額と内容を確認し、その結果を決裁や理事会への報告で残しておけば説明はつきます。

⚠ 利害関係のある理事が議決に加わる

理事の親族が経営する会社と契約すること自体は禁じられていません。ただ、その契約を理事会で決めるときに、特別の利害関係がある理事本人が議決に加わっていると、決議の手続きそのものが指摘の対象になります。議事録には、その理事が議決に加わらなかったことを氏名入りで残します。理事本人が相手方の代表者を務めている場合などは利益相反取引にもあたるため、事前に重要な事実を示して理事会の承認を受ける必要があります(社会福祉法第45条の16第4項で一般法人法第84条を準用)。

どこまで厳密にやるかは、金額と継続期間、相手との関係で判断するのが現実的です。少額で単発の消耗品まで毎回3社見積もりを取るのは負担が大きいでしょうし、先ほどの金額以下なら2社で足ります。一方で、金額が大きい、同じ相手と何年も続いている、理事や職員の関係先である、のどれかに当てはまる契約は、所轄庁の担当窓口や顧問の会計士に一度相談しておくと判断の根拠が残ります。

出典: 京都市「社会福祉法人の指導監査におけるよくある指摘と対応策」(令和元年5月22日)


5. 随意契約理由書の書き方と記入例

📄 随意契約理由書に入れる項目と記載例

1. 件名
例:〇〇保育園 厨房設備保守点検業務(令和〇年度)

2. 契約方法と根拠
例:随意契約(経理規程第〇条第〇項第〇号 予定価格が規程の定める額を超えないため)

3. 予定価格と算定根拠
例:〇〇円(前年度契約額と本年度予算額をもとに設定)

4. 見積徴取先と見積額
例:A社 〇〇円/B社 〇〇円/C社 〇〇円(同一仕様書で依頼)

5. 選定業者と選定理由
例:A社。最低価格であり、既設設備の保守実績があり、故障時の到着時間が最も短いため。

6. 決裁
起案日、起案者、理事長の決裁日。理事会決定が必要な契約は、決議した理事会の開催日も記載する。

1枚の紙に、決め方・比べ方・選んだ理由が収まっていることがポイントです。見積書の原本と一緒に綴じておけば、数年後に担当者が替わっていても、監査の場で書類を出すだけで経緯が伝わります。


6. 実務Q&A

  • 台風で屋根が破損しました。見積もりを3社分そろえてからでないと修理を頼めませんか。

    緊急の必要があって競争にかける時間がない場合は、通知でも随意契約が認められており、災害発生時の応急工事が例として挙げられています。まず修理を優先してください。そのうえで、被害の状況と発注までの経緯を日付入りで記録しておきます。事後の決裁や理事会への報告の段取りは、自法人の経理規程に緊急時の定めがないかもあわせて確認してください。

  • 見積もりを比べると、毎回20年来の付き合いの業者に決まります。問題ありませんか。

    比べた結果として同じ業者を選んでいるなら問題ありません。ただ、金額が毎回わずかな差で同じ順位になる、他社の見積もりが形式的に見える、といった状態が続くと、比較が実質的に行われているかを聞かれることがあります。理由書には金額だけでなく、保守の実績や故障時の対応の早さなど、その業者を選ぶ具体的な理由を書いておくと説明に使えます。

  • 経理規程に改正前の見積もりの金額(250万円など)が書いてあります。改正に合わせて直さないといけませんか。

    改正前の金額のままでも、通知より多くの見積もりを取る運用になるだけなので、それだけで問題になるものではありません。新しい金額で運用したい場合は、理事会で経理規程を改正してから切り替えます。規程に随意契約の条項自体がない、金額をいつ決めたか分からない、という場合は、改正の機会に所轄庁の担当窓口や顧問の会計士に相談しながら全体を見直すとよいでしょう。


7. この記事のまとめ

社会福祉法人の契約は競争入札が基本の建て付けですが、実務の大半は随意契約で回っています。通知が列挙する場合に当てはまれば、それ自体は認められている運用です。問われるのは、随意契約にした根拠と、比べて選んだ記録が残っているかどうかでした。

具体的には、予定価格を先に決める、原則3社以上から同じ条件で見積もりを取る、経理規程の根拠条項と選定理由を理由書に書く、の3点です。発注の分割や、利害関係のある理事の議決参加のように、手続きそのものが崩れるパターンだけは避けてください。

次に発注する保守契約や備品購入で、一度だけ理由書の様式に沿って記録を作ってみてください。過去の契約の中に、金額が大きい、何年も同じ相手、関係者の会社、のいずれかに当てはまるものがあれば、次の監査の前に専門家と一緒に経緯を確認しておくと落ち着いて臨めます。

大田黒 健太 法人運営支援・施設DX推進

Kenta Ootaguro

熊本出身
法人運営支援を主として、ICTシステム導入・認可申請支援・WEBサイト企画・認定こども園移行支援等、保育事業の幅広い支援をおこなう。

社会福祉法人支援システム ココ+ナビ プロジェクトリーダー

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