新人とAI、効率化と育成について – ココ+ナビ
社会福祉法人運営支援システム
平日 9:00-18:00 📞 099-214-2600
ブログ

新人とAI、効率化と育成について

新人とAI、効率化と育成について
ココ+ナビ

理事長・施設長・事務長様
株式会社幼保支援 法人運営支援/施設DX推進担当の大田黒です。
これからAIを導入しよう、報告書やケアプラン作成を楽にしよう、と考えたとき、必ずと言っていいほど頭をよぎる懸念はありませんか?効率化はできるだろう。でも新人育成の面で、本当にこれでいいのか、という迷いです。今日はこの問いに対しての私の考えを書き残します。またAIがテーマですが、ここから先否応にもAIを使う時代になると考えています。遅いか早いかの違いです。お時間があればご覧ください。


1. 「効率化はできるが、育成は大丈夫か」という迷い

AI導入の検討段階で理事長・事務長から相談を受けるとき、必ず出てくるのがこの一言です。「業務が楽になるのは分かる。ただ、新人が自分で考えなくなるのではないか」。

これは漠然とした不安ではありません。厚生労働省が2025年4月に公表した「2040年に向けたサービス提供体制等のあり方に関する中間とりまとめ」では、居宅サービス計画書(ケアプラン)やサービス担当者会議の議事録の原案作成に生成AIを活用することで業務効率化につながる、と明記されています。国としても活用を後押しする方向であることは間違いありません。2026年には主要な生成AI事業者が福祉事業者向けのAIサービスを拡充し、自治体の福祉相談AIも本格運用に入っています。導入のハードルは、この一年で確実に下がりました。

ただ、この中間とりまとめは業務効率化についての言及であって、新人育成への影響については触れていません。効率化の話と育成の話は、実は別の軸で考える必要があります。

特に社会福祉法人の現場は、法人内に判断のロールモデルとなる中堅職員の数が限られています。一人の新人が独り立ちするまでの期間に、上司が横についてOJTをする余裕がある法人ばかりではありません。だからこそ、AIという便利な道具が育成のプロセスを丸ごと肩代わりしてしまうリスクを、導入前の段階できちんと見積もっておく必要があるんです。


2. 社会福祉法人の現場で広がるAI活用と、見過ごせない研究結果

まず現状を押さえておきましょう。社会福祉法人の現場では、すでに次のようなAI活用が進んでいます。

  • 放課後等デイサービス施設での個別支援計画たたき台の自動生成。職員の入力情報をもとにAIが原案を作成し、新人管理責任者の作成時間が最大4時間から約1時間に短縮された事例がある
  • ケアプラン原案、サービス担当者会議の議事録原案の作成支援(厚労省の中間とりまとめでも言及)
  • 介護記録・日々の報告書の自動要約による事務負担の軽減
  • NotebookLM等を使った、利用者情報や打ち合わせ記録の整理・引き継ぎ資料の作成

ここまでは、いわゆる「効率化」の話です。問題はここからで、AI活用と思考力の関係について、2025年6月にとある研究チームが脳波測定を伴う調査を発表しています。生成AIに文章作成を全面的に頼った被験者は、脳活動が低下したまま元に戻りにくく、以降の作業に必要な集中力や意欲そのものが落ちる、という観察結果です。国内でもKDDI総合研究所が同様の知見をコラムで紹介しており、一過性の疲労ではなく、依存の度合いに応じて認知面の反応が鈍くなる傾向がある、と指摘しています。

経済産業省の資料「若手社員の育成と生成AI」でも、AIをただ使わせるだけでは若手育成にならず、自分ごととして仕事に向き合うジョブクラフティングや、試行錯誤を伴う探究活動と組み合わせて初めて育成効果が出る、という指摘があります。逆に言えば、AIを使わせること自体が悪いのではなく、悩む工程を経ずに使わせることが問題だということです。

介護の現場でも同様の声があります。経験の浅いケアマネジャーにとって、「どこに着目すべきか」「どのサービスの組み合わせが利用者に合うか」を自分で悩み、判断する経験そのものが、その後の専門性の土台になります。AIが最初から答えらしきものを出してしまうと、この悩む工程が丸ごと消えてしまうんです。実際、新潟県のある放課後等デイサービス施設では、AIが個別支援計画のたたき台を自動生成する仕組みを導入した際、ベテラン職員からは好評だった一方、経験の浅い管理責任者候補からは「たたき台があると、それで満足してしまい自分の見立てを深掘りしなくなる」という声も出ています。

  • AIへの全面依存は、脳活動の低下という形で科学的に裏付けられ始めている
  • 若手育成には、AIの利用そのものより「悩んで判断する経験」の有無が効いてくる
  • 厚労省の方針もあくまで「業務効率化」の文脈であり、育成効果を保証するものではない

3. 経験年数別に分ける、AI活用の段階導入フロー

ここが今回の結論です。管理者はAIを使い倒してください。すでに判断の軸を持っているからです。一方で新人には、思考のプロセスを飛ばさせない使い方に絞る必要があります。役職や経験年数で利用範囲を分けるフローを紹介します。線引きの基準は経験年数そのものというより、支援計画やケアプランについて自分なりの見立てを一人で言語化できるかどうか、です。目安として経験3年前後で区切っている法人が多いですが、法人の規模やOJT体制によって調整してください。

  1. 経験3年未満は、まず自分で一次案を書く

    ケアプランや支援計画の原案は、AIを使う前に本人が一度自分の言葉で書く。時間がかかっても構いません。ここを飛ばすと、利用者のどこを見て、何を根拠に判断したかという軸そのものが育たなくなります。

  2. AIは比較材料・点検役として使う

    自分の一次案とAIの出力を見比べ、抜けている観点や表現の粗さに気づかせる。AI案の方が優れていると感じても、そのまま採用させず、なぜその案の方が良いのかを考えさせる工程を挟みます。

  3. 修正理由を口頭か記録で言語化させる

    「なぜAI案のこの部分を採用し、この部分を変えたか」を考えてから反映させる。判断根拠を言葉にする訓練になります。

  4. 管理者・中堅職員はステップ1を省略してよい

    経営判断資料の下読み、監査対応書類のチェック、複数案の比較検討など、すでに判断軸がある業務ではAIをフル活用して構いません。むしろ、こうした業務にまで自前主義を貫く必要はなく、AIに任せられる部分は任せて、判断そのものに時間を使うべきです。


4. 現場で起こりがちなNG行動

⚠ 新人にAI生成の計画書・記録をそのまま確定させる

時間がないからと、新人が作ったAI案をチェックせずそのまま公式記録にしてしまうケース。本人の判断が一度も入らないまま計画書が確定し、育成機会も失われます。運営指導では計画書の内容と実際の支援内容の整合性が確認されますが、内容を本人が理解していないと、当日の質問に答えられず、かえって指摘を受けやすくなります。

⚠ 全職員に一律の利用ルールを適用する

「AI利用可・不可」を役職や経験年数で分けず、法人全体で同じルールにしてしまうと、管理者は使いにくくなり、新人は歯止めなく使えてしまう。両方にとって望ましくない結果になります。特に「全員AI利用禁止」という一律ルールにしてしまう法人も見かけますが、これは管理者の効率化まで犠牲にする、行き過ぎた対応だと思います。

⚠ 利用者の氏名・住所をそのまま入力する

要配慮個人情報にあたる病歴や支援内容を、実名のまま無料版の生成AIに入力してしまうケース。「A様(80代女性・要介護2)」のように匿名化してから入力する運用を徹底する必要があります。秘密保持義務にも関わる点ですし、無料版のAIサービスでは設定によって入力内容が学習データとして扱われる場合もあるため、事業所として利用するツールを統一し、個人の無料アカウントでの利用を制限することも大事です。


5. 役職別AI利用ガイドラインの記載例

内部規程やAI利用ガイドラインを作る際は、役職・経験年数ごとに利用範囲を分けて明記しておくと、現場での判断がぶれません。以下は記載例です。

📄 AI利用に関する内部ルール(記載例)

第1条(対象範囲)
本ルールは、法人内における生成AIツールの業務利用について定める。

第2条(役職別の利用範囲)
管理職・中堅職員(経験3年以上)は、経営判断資料の下読み、書類レビュー、記録要約等にAIを利用できる。経験3年未満の職員は、支援計画・ケアプラン等の原案を自ら作成した後の比較・点検用途に限りAIを利用できる。

第3条(個人情報の取り扱い)
利用者の氏名、住所その他個人を特定できる情報は入力しない。入力する場合は年代・性別・状態像等に置き換えた匿名化情報とする。

第4条(記録の保存)
AIを利用して作成した文書は、作成者本人の確認・修正を経たうえで確定する。AI出力をそのまま公式記録として保存してはならない。

第5条(見直し)
本ルールは、対象職員の習熟度及びAI技術の変化を踏まえ、半年ごとに内容を見直す。役職別の利用範囲についても、対象職員の判断力の向上に応じて段階的に拡大するものとする。


6. 実務Q&A

  • 新人にはAIを一切使わせないほうがいいのでしょうか。

    禁止までは必要ありません。ポイントは順番です。自分で一次案を考えたあとに比較材料としてAIを使わせる分には、育成上のマイナスは小さいと考えられます。最初からAI任せにすることが問題なんです。むしろ、AIの出力と自分の案の違いに気づく訓練は、独学よりも効率的に判断力を鍛えられる面もあります。順番さえ間違えなければ、AIは育成の敵ではなく材料になります。

  • 管理者自身がAIを使う際に、気をつけることはありますか。

    管理者は判断の軸をすでに持っているので、AI活用による成長機会の阻害や思考力低下のリスクは新人ほど高くありません。ただし個人情報の匿名化ルールは役職に関係なく適用されます。また、AIが出した結論をそのまま理事会や評議員会の資料に転記するのではなく、最終的な経営判断の根拠は自分の言葉で説明できる状態にしておくことをお勧めします。監事監査や実地指導で経営判断の背景を問われた際、AI任せの説明では説得力を欠きます。

  • 新人の利用制限を行うとすればいつまで続けるべきか。

    一律の年数で区切るより、上長への説明が的確にできているかを目安にしてください。AI案との違いを自分の言葉で説明できるようになった時点で、利用範囲を段階的に広げていく形が現実的です。目安として、判断根拠の説明に上長からの指摘や修正が続けて入らなくなった段階を一つの節目と考えるとよいでしょう。年次に関わらず、この節目に達していない職員には制限を継続する判断も必要です。


7. この記事のまとめ

AI導入を迷う理由は、効率化への期待と育成への不安が同時に存在するからです。今回はっきりさせておきたいのは、この二つを同じ物差しで測る必要はない、ということでした。

管理者のみなさんはAIを使い倒してください。判断力はすでにお持ちだからです。ただ新人にとっては、AIが考える機会そのものを奪う道具になり得る。導入前に、この線引きだけは決めておきたいところですね。

役職ごとに利用範囲を分けたルールを一つ作っておくだけで、効率化と育成、どちらも諦めずに済みます。ガイドラインは一度作って終わりではなく、新人が育つ過程を見ながら半年、一年の単位で見直していくものです。まずは今回の記載例をたたき台に、自法人の実情に合わせて条文を調整するところから始めてみてください。もしかしたらAIが普及した世界では、人間は考えずにAIの指示のもと手を動かすSFの様な社会になっていくのかもしれません。。が、今は適切なAIとの距離感が必要だと思います。

大田黒 健太 法人運営支援・施設DX推進

Kenta Ootaguro

熊本出身
法人運営支援を主として、ICTシステム導入・認可申請支援・WEBサイト企画・認定こども園移行支援等、保育事業の幅広い支援をおこなう。

社会福祉法人支援システム ココ+ナビ プロジェクトリーダー

初期費用0円・月額9,900円〜 / 30分のデモで実際の画面を確認
無料デモを申し込む →

資料ダウンロード

KoKo+naviのサービス資料をお送りします。
以下のフォームにご入力ください。